JR東海社長 リニア「1県1駅」を正式に表明

リニア中央新幹線

[ 2009年 6月 10日 水曜日 15時31分 ]

 JR東海の松本正之社長は8日、東京都内で開かれたリニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会の総会で、首都圏―中京圏間で2025年の開業を目指すリニア中央新幹線の中間駅について「1県1駅」の設置方針を正式に表明した。長野県が求める複数駅設置には否定的な考えを示し、費用は地元による全額負担を想定していると強調。今月中にも想定3ルートの建設費や総距離などの試算を各都県に示し、「できる限り早く次のステップに移りたい」とした。

 中間駅をめぐっては同社の葛西敬之会長が昨年末、「1県1駅が常識的」とする私見を示していたが、社の意思として公式表明したのは初めて。

 来賓として出席した総会で松本社長は「超高速の特性を生かすこと、全国新幹線鉄道整備法にある地域振興の観点から、1県に1駅ずつを設置することが適切だと考えている」と表明。総会後に記者団の取材に応じ、「各都県から中間駅の話を進めるよう要請があり、(説明に入る前に)当社の考え方、大前提をきちっとお伝えしようと考えた」と理由を語った。

 本県では村井仁知事が「県内に2駅あってもいい」と発言しているが、「1県1駅は原則という位置付けか」の質問に「もともと駅はつくらないで超高速の特性を生かそうと思っていた。さまざまな意見があり、各都県の公平性を踏まえて1県1駅を大前提とした」と答え、複数駅設置に否定的な考えを示した。

 中間駅の設置費は受益者負担の視点で「地元による全額負担をお願いしたい」と繰り返した。費用は「地形や構造によって異なる」とし、具体的な設置場所の決定は個別対応になるとし、「駅の構造や費用を考慮しながらの選択になると思うが、一番合理的なところに落ち着くのが良いのではないか」と述べた。

 A(南アルプスを北側に迂回して諏訪経由で木曽谷を南下)、B(同経由で伊那谷を南下)、C(南ア直下をトンネルで結ぶ)の3案からのルート選定に関しては「工事費や長さ、問題点など判断材料になるデータを各都県に示す」とした。

   *   *

 牧野光朗飯田市長の話
 詳細は承知していないが、飯田駅の設置に向けて全力を尽くしたい

   *   *

 松本社長が正式に表明した中間駅の「1県1駅」設置方針。飯田駅の実現を目指す飯田下伊那地方にとっては追い風になるのか。

 これまで飯伊の関係者は「直線Cルートによる建設」と「1県1駅」の二つを、飯田駅実現に必要な鍵と考えてきた。そのうちの一つが、今回の松本発言で固まったことになる。

 「飯田駅実現に向けた大きな一歩だと受け止めている」と歓迎したのはリニア飯田駅設置推進協議会の宮島八束会長。懸念のルート問題についても「近くJR東海によって試算が示され、固まってくるだろう」との見通しを示した。

 JR東海の方針どおり、直線ルートによる建設が決まれば、県内の通過地は飯伊のほかなく、飯田駅が現実味を帯びてくる。いわば、リーチがかかった状態だ。

 一方でリスクも高まった。県が主張するBルートになった場合の実現性は大きく低下したからだ。

 総会の会場で腰原愛正副知事は「あくまでJRの希望」と不満顔をのぞかせ、これまで通り「中間駅は地域振興に質するというのが大前提」とする県の姿勢を強調した。

 しかし、全幹法が定める「地域振興への寄与」の文言を持ってしても、高速輸送を標ぼうするリニアでは多数の中間駅設置は非現実的だとする見方が強く、他県が「1県1駅」を受け入れれば、身勝手とも受け取れる主張は力を失う。Bルートの要望を通すとなればなおさらだ。

 松本社長は近く、3案それぞれの試算を明らかにし、ルート選定の作業に入りたいとの考えを示した。飯田駅実現に向けた焦点は経路選定に絞られたが、それは将来の明暗を分ける選択となる。

  

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