マツタケの収穫量が減少傾向にある中、自然任せから保護管理する農業型に移行することで、マツタケ採取を楽しむ文化の持続化や産業振興を図ろうと、喬木村の村民有志ら12人でつくる「松茸研究会」(池上和利会長)が「シロ」の人工造成に取り組んでいる。
2019年に村内で開かれた、マツタケ専業で生計を立て「松茸博士」として知られる藤原儀兵衛氏(伊那市)の講演をきっかけに、藤原氏のマツタケ山づくりに関心を高めた有志らが20年に発足。藤原氏のもとを視察に訪れ、人工的にシロを造成する「根切り法」を学び、村や林野庁の補助金を活用しながら実践を始めた。
シロはマツタケの本体である菌糸とアカマツの根が一緒になった塊。地中で輪状に広り、マツタケはこのシロに沿って生える。根切り法は、春に地表に堆積した落ち葉を取り除いた後、アカマツの根を切って新しい根が出るのを促し、秋に他の場所で採取したマツタケの開きを新しい根の元に24時間植えておくことで、根に菌が付き、新しいシロができるというもの。シロができるまでには5年ほど掛かるという。
同研究会では、管理が不十分となっている山林を地主から借り受け21年に試行。以前はマツタケが採れていたものの近年は採れなくなっている場所を中心に、今年は2つの山計14カ所で行い、来年以降さらに増やしていく計画だ。
同研究会の原一樹さん(69)は、間伐材や落ち葉など、かつては暮らしの中でエネルギーとして活用していたものが使われなくなり、人が山に入らなくなったことがマツタケの減少につながっていると指摘。「落ち葉が堆積しにくい山奥の急傾斜地ばかりで採れるようになり、事故の増加にもつながっている。人工的に身近な里山にシロが確保できれば、安全に安定的にマツタケの採取を楽しむことができる」と期待する。
実績を上げ手法が確立できた際には、村や財産区など他のマツタケ関係者との連携を深め、現在は有志で行っている活動を広く普及させたい構え。「イチゴに次ぐ村の代表的な農産物にしたい」とし、リニア中央新幹線の開通を見据え、都市部の需要に応えられるマツタケ観光の振興を目指す。
◎写真説明:新根の元にマツタケを植える会員