国土交通省天竜川上流河川事務所は27日、阿南町東條開窪地区で実施する地すべり対策事業の着工式を、同町民会館で開いた。2038年度までを事業期間とし、同地区と天龍村平岡、中井侍の3地区で行う事業の一環。開窪地区では地すべりの要因となる地下水を取り除くため、直径3・5メートル、深さ10~60メートルの集水井(せい)14基の設置などを行う。
建物や宅地など地すべりの直接的な被害に加え、天竜川への土砂流入に伴う河道閉塞による上流域の水没や決壊で、下流域で氾濫が発生するリスクを低減させるために実施する。
開窪地区では07年に、地表から浅い箇所で地すべりが発生して県が対策を実施。その後の国の調査でさらに深い箇所に地すべりが起こりやすい地質があることが判明した。18年度に国直轄事業として対策工事を行うことが決まった。
本年度は集水井4基の設置などを計画し、工事は9月にスタート。これまでに3基の掘削が完了している。式典後には現地視察を行い、工事の進ちょく状況を確認した。
式典で勝野一成町長は「町内では、過去から多くの地すべりが発生し対策を施してきたが、町民の不安を払拭(ふっしょく)するには至っていない。国直轄による大規模な事業により、大地震やゲリラ豪雨などの災害に耐え得る地域になることを期待する」と話した。
天龍村平岡地区では今年3月末に着工式を行い、本年度から地下水を排除するための横ボーリング工などが行われている。中井侍地区では着工に向けた準備が進む。3地区合わせた総事業費は約195億円。
◎写真説明:現地視察を行う勝野町長ら