農林水産省は15日、棚田地域の活性化や景観保全など優れた取り組みをする「つなぐ棚田遺産」に全国271カ所を選定したと発表した。「日本の棚田百選」を改定したポスト棚田百選の位置付けで、飯田下伊那地域からは飯田市千代の「よこね田んぼ」が百選に続き選ばれた。
同省は1999年、棚田の保全活動推進などを目的として、全国の優れた棚田134カ所を「日本の棚田百選」に認定した。認定から20年以上が経過したことから、棚田地域振興の取り組みを再評価し、優れた棚田を棚田遺産として選定。棚田地域の活性化や、棚田の多面的機能の理解促進につなげる。
正式名称は「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」。94カ所が百選に続いて選ばれ、177カ所が新たに選定された。県内は15カ所で、飯伊ではよこね田んぼのみ。
よこね田んぼは戦国から江戸期に開発された棚田で、千代芋平・野池地籍に3ヘクタール110枚の棚田が広がる。高齢化や後継者不足で休耕田が増えたため、98年、自治会などが立ち上がり、よこね田んぼ保全委員会が発足。地元住民を中心に保全活動を続けている。2019年にNPO法人里山べーすも加わり、よこね田んぼを核とした地域の振興に力を入れている。
毎年、田植えや稲刈りなど体験イベントを開き、保全活動を通じて地域との交流活動を展開。17年に企業や個人を対象に「棚田オーナー制度」を導入。特産品としてコシヒカリのはざ掛け米や、よこね米から作った日本酒を販売している。
保全委員会の関口俊博委員長(71)は「遺産選定は大変ありがたいこと」と感謝し、「よこね田んぼは地域の文化遺産であり、住民の協力で守ってきた。千代といえばよこね田んぼと言われるようにさらに活動を発展させ、持続可能な地域を目指していきたい」と話した。
◎写真説明:棚田を核とした地域振興を展開している