ロシアによる軍事侵攻を受けて高森町への避難を希望していたウクライナ人の親子ら9人が1日、滞在先となる同町の温泉宿泊施設「湯ケ洞」に到着した。9人は2週間ほど同施設に宿泊し、町営住宅などに移る予定。避難民の受け入れは県内で初めてとなる。
町が受け入れたのは、総合格闘技団体「空手道禅道会」(総本部・飯田市上郷黒田)のウクライナ支部で空手を学んでいる3~19歳の会員6人とその母親3人の計9人。いずれも首都キーウ南西の都市から避難してきた。町が座席を確保した民間機で4月30日未明にポーランドの首都ワルシャワを発ち、午後1時過ぎに成田国際空港に到着した。
空港の国際線到着ロビーでは、壬生照玄町長と禅道会主席師範の小沢隆さん(61)=同町山吹=らが9人の到着を待った。入国審査や新型コロナウイルス検査などを終えた母子らが順に姿を見せると、ウクライナ語や英語で「ようこそ」と記した手作りの横断幕を掲げたり花束を手渡したりして歓迎した。
その後は町が用意したバスで移動し、1日午前0時過ぎに宿泊施設に到着。町職員や禅道会の関係者ら約20人が出迎えた。
バスにも同乗した壬生町長は9人について「長旅で疲れた様子もあったが、町民の歓迎を受けてうれしそうにしていた」と語り、「戦地から逃れてこられた人たちが安心して暮らせるように支援していきたい。日本の文化や生活様式を覚えてもらいつつ、希望を聞き取り支援の準備を進める」とした。
9人は今後、抗原定量検査と個々の希望に応じてコロナワクチンの接種を受け、6日に町が開く記者会見に出席する。
避難民支援の方針示す
高森町は2日の町議会全員協議会で、町が受け入れたウクライナ避難民9人の支援体制や方針を説明した。
生活費にはこれまで町や禅道会に集まった募金・寄付金を充て、日本財団に助成金を申請しているが、壬生町長は「日本語学校など町の方で負担する費用も出てくる」ことから、6月の定例会に関連費を含む補正予算を方針を示し、理解を求めた。
町によると、9人が町内の宿泊施設に滞在する2週間の間に、長期滞在に向けた在留資格の変更など生活基盤の確立に必要な手続きを済ませる。その後は町営住宅や町内の県営住宅などに居住してもらい、経済的に自立した生活ができるように支援を行っていく。
◎写真説明:横断幕を掲げ、記念撮影する避難民9人と関係者(町提供)