古木が植わる喬木村阿島のフジ園「阿島の大藤」の維持管理を巡り、存続が困難な状況に追い込まれていることが分かった。担い手不足が主な理由で、地元4軒でつくる保存会は「存続は難しい」と判断。例年だと房を伸ばすためのせん定作業の時期だが、手付かずのまま。存続か、伐採して閉園か―。フジ園を守ってきた人の意思を受け継いでどうにか残したい思いがある一方、保存会は「苦渋の選択もある」と頭を悩ませる。
フジは安養寺境内に植わる。10アールほどの敷地内には5種類20本あり、樹齢は古いもので400年近い。「阿島の大藤」として知られ、花の見頃となる4月下旬から5月中旬にかけて毎年多くの観光客を集める。
フジの名所として広く知られるようになった一方、地域のボランティアや4軒のみの保存会で維持しているとあって、管理が行き届かなくなっている。
保存会のほとんどが会社勤務との両立を図っていることも背景にある。中森高茂さん(59)もその一人で、「手入れ不足になり、ここ数年は花の状態があまり良くない」と指摘。ただ樹木医の診断だと、手を加えれば以前のような見事な花を付けるといい「長年携わってきた人の気持ちに応えたい」との思いもある。
昨年はシーズン中に県内外から約3000人が訪れた。入園料として中学生以上から100円取っているが、開園準備費や地代などを含めると維持費が入園料でまかなえないのが現状だ。
保存会によると、阿島の大藤は1933(昭和8)年、地元の商店主が飯田市内の旧家から譲り受けたフジを移植したのが始まり。戦時中は手入れができずフジ棚が崩れるほど荒れた時期もあった。戦後の食糧難で「木を切って敷地で米をつくる」といった話も持ち上がったが、住民の熱意で回避してきた。老朽化に伴い茶屋を新築した88年頃から4軒で守っている。
維持管理の難しい現状を受け、保存会は昨年から村やNPO法人たかぎと存続に向けて相談している。話し合いではフジの木や茶屋を寄付する形で残すことを提案。地域の公園としての活用も模索するが、方向性は見い出せていない。今後は地元区などにも相談を持ち掛ける中で存続できる方法を探りたいとしている。
中森さんは「どうにかして残したい気持ちは当然あるが、自分たちではどうにもならない。限界にきている」と苦しい胸の内を語った。
◎写真説明:フジ園を見渡す中森さん