旧満州(中国東北部)に入植した満蒙開拓団の苦難の歴史を伝え、平和の尊さを語り継ぐ「満蒙開拓平和記念館」(寺沢秀文館長)=阿智村駒場=の新館セミナー棟が完成し、竣工式典が19日、同所で開かれた。同館や行政、地元関係者ら約50人が出席。セミナー棟の竣工を祝うとともに、歴史継承へ気持ちを新たにした。
新館セミナー棟は、現在の本館西側に増築された木造平屋建て建物で、床面積297・45平方メートル。120席のセミナールームや42席の証言映像ルームなどを備え、本館と渡り廊下のスロープで接続する。
総事業費は9250万円で、うち3600万円を一般寄付(クラウドファンディング含む)、2400万円を行政からの補助金でまかなっている。
これまでの同記念館は、建物が狭く修学旅行など大人数を受入れる場合には、複数グループに分かれての見学や他の公共施設を借りての学習などを行う必要があった。セミナー棟の完成により、同館のみでの受入れが可能になる。
この日の式典では、これまでの記念館の歩みを映像で振り返り、設計を担当した新井建築工房の新井優代表がコンセプトを説明。毎月1回展示ガイドを務める松川高校ボランティア部の大平一真部長(17)が「満蒙開拓の歴史を私たちが後世に伝え、平和な時代を守っていく努力と研鑽を重ねる」と誓いの言葉を述べた。
あいさつに立った寺沢秀文館長はセミナー棟建設に関わった全ての人に感謝を述べ、「セミナー棟の完成がゴールではない。施設から何を発信し、どう平和につなげていくかが重要。平和の種まきの新たなスタートと考え、歴史を語り継いでいく」と力を込めた。熊谷秀樹村長は「スタッフとボランティア、役員が一丸となっての運営により今日につながった。今後も村としてしっかり支援していきたい」と話していた。
◎写真説明:セミナー棟の竣工式典