飯田下伊那地域の新たな食としてチョウザメ料理を広めようと、豊丘村で養殖・振興プロジェクトが動き出した。県の元気づくり支援金を活用。リニア時代に向け、キャビア(卵)とともに発信しようとしている。
中山間地の清流を活用したチョウザメの養殖は、小県郡長和町など全国の約50箇所が取り組んでいる。いずれも高級食材のキャビアが商材で、オスなど魚肉の利用にはつながっていない。
プロジェクトの中心的存在は村内で割烹安藤を営む池野大樹さん(43)。「子がキャビアなら親もおいしいはず」と調理を試したところ、「淡水魚と思えない味」と衝撃を受けたという。「スープにしても、生でも、寝かしてもうまい」と可能性を見出した。
気候変動による海の漁獲量減が懸念される中、「地元での養殖普及は地産地消での安定供給につながる」とし、村や調理師会などを巻き込み、「新たな南信州の味」としてチョウザメ料理を広めようと奔走している。
元気づくり支援金の事業採択を受け、6日に「チョウザメ養殖・振興プロジェクト会議」(片桐久典代表)が発足した。
いけすや中山間地の田んぼを活用し、養殖技術を習得・共有しながら試験導入を進める。
また、調理師向けのチョウザメ試食会や料理コンテストも企画し、味や調理法の普及も図っていく。
3年間でキャビアがとれる卵重視の品種ではなく、キャビアまでに7年かかるが病気に強い品種を導入する予定。
池野さんは「キャビアができるころに、ちょうどリニアが通る。チョウザメには可能性がある。自分だけでなく豊丘村、南信州全体で一緒になって、素通りされないものを育てていく」と意気込んでいる。
◎写真説明:チョウザメを飼育するいけす