通信大手のKDDIと飯田市は3日、自動運転で走る車内で、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術を駆使した観光案内を体験してもらう実証実験を同市中心市街地で行った。座席でゴーグル型端末を装着すると、実際の景色に連動して、画像や文字などが出現。一般市民らも乗車し、エンターテインメントの要素も詰まった先端技術を体感した。
2027年のリニア中央新幹線の開業を見据え、県内駅(同市上郷飯沼・座光寺)からの二次交通での活用などを想定。多くの人出でにぎわう「飯田丘のまちフェスティバル」と合わせて企画した。自動運転は緊急時のみ運転手が操作する「レベル3」で、公道を封鎖して行った。
コースは市内の中央通り3、4丁目交差点近くから東和町の環状交差点「ラウンドアバウト」を2周して戻る約600メートルで、事前の3D地図の情報に基づき時速8~12キロで走行。後部座席に順次、2人ずつ乗車した。
専用ゴーグルを装着すると、KDDIのバーチャルキャラクター「レナ」や丘フェスのキャラ「ナミキちゃん」などが目の前に登場。3Dマップと連動した走行場所に応じて、周囲の店舗や天龍峡などの観光地、丘フェスのイベント情報を案内した。音楽やコンピューターグラフィックによる多彩な演出でも体験者らを楽しませた。
地元住民など40人余が体験した。同市東和町の自営業の男性(75)は「夢のような空間で、日進月歩の技術革新を体感できた。自動運転だけでなく、観光案内でも新しいものを取り入れていくことは自然の流れ。さらなる進化が楽しみ」と笑顔を見せていた。
KDDIは体験者の感想やニーズなどをアンケートで把握し、今後の研究に生かす。担当者は「自動運転に伴い、車内の自由度が広がる。いかに便利に楽しんでもらうか。エンターテインメントとしての可能性や望まれるサービスを今後も追求していきたい」と話した。
牧野光朗市長は「自動運転とVRの技術、さらには(左周りなど規則性がある)ラウンドアバウトとの親和性も感じ、さまざまな可能性を実感できた。(広域交通拠点に位置付ける)リニア駅からの二次交通を検討する上でも、対象に入ってこよう」と将来を見据えた。