飯田下伊那が観光資源化している一本桜の一つ、飯田市江戸町の正永寺のシダレザクラ(推定樹齢400~450年)が15日朝、倒伏した。前日に住職や檀家らが魂を抜く撥遣法要を執り行い、30分後に伐採する予定だった。地域のシンボル的存在で惜しむ声が広がっている。
本堂前に植わる古木で、樹高は15メートル、幹回りは3・8メートルほど。1408(応永15)年創建の寺が現在の正永町から移った約420年前に植えられたと伝えられている。
広がる枝から流れ出るように花が咲き、滝に見えると評判だったが、2000年ごろに雪の重みで片側の枝が折れ、少しずつ衰弱。支柱を設置して保護したが、ここ数年は花の数も減っていた。
9日に幹の一部がはがれ落ち、根元から傾いたため、蒲憲正住職(45)は参拝者の安全確保が第一と判断。15日の伐採を決め、14日午後に急きょ、桜から魂を抜く同法要を執り行った。
檀家の総代ら約20人が参加し、住職の読経で焼香。両手を合わせ、それぞれ別れを惜しんだ。
総代長の稲垣隆さん(89)=上郷黒田=は「総代になり40年間、ずっと見上げてきた桜なので寂しい気持ちでいっぱい」と話した。
翌15日午前8時に庭師が伐採する予定だったが、30分ほど前に根元から折れて倒れた。障害物のない通路に折れ、周辺の観音像や柱にぶつからなかった。
隣では、実から苗を育て9年前に植えた2世桜がたくさんの葉をつけている。昨春に初めて咲き、400年余の歴史を継いだ。
蒲住職は「寂しさもあるが、朽ちていくのが命ある者の定め。2代目が受け継ぎ、またみなさんに愛していただければ」と話していた。
◎写真説明:倒伏前に執り行った法要