県立阿南病院は30日、今月から始まった売木村国保直営診療所でのオンライン診療の様子を公開した。病院と診療所をつなぎ、患者は診療所の診察室で病院にいる医師の診察を受ける方式。吉沢久事務部長は「ノウハウが確立できれば、他の診療所の医師が不在になった場合にも応用できるのではないか」と話している。
売木村の同診療所では昨年3月に村雇用の常勤医師が退職したため、同4月から阿南病院に医師1人を週1回派遣してもらい、毎週金曜日に内科の診療を行っている。
「診療日を週2回に増やしてほしい」との村側の要望を受け、病院側は医師の負担軽減を図りながらも村の要望に応えようと検討。村が電子カルテを導入したことを受け、5月から毎週月曜日にオンライン診療を開始した。現在は対面診療を行い▽体調・病状が安定している▽治療は薬の処方のみ―と判断された患者で、同意があった人に限りオンラインで診療を行っている。
30日は村民4人がオンライン診療を受診した。今回が初めてという70代女性は「薬の処方だけなので対面と変りはなく、次回予約までに悪化すれば対面診療も受けられるということなので不安はない」。50代女性も「対面と同じように話をすることができた」とした上で「緊急時にはいつでもオンライン診療が受けられるようになればいい」と期待を寄せた。
一般的なオンライン診療は、患者自身がスマートフォンやタブレットを操作して自宅で医師の診療を受けるが、阿南病院の方式では診療所と病院をインターネット回線でつなぎ、患者のそばにいる看護師が機器を操作する。診療所で保管している電子カルテを病院から遠隔操作することで、患者の情報を確認しながら診察することが可能になっている。
同診療所での対面・オンライン診療を担当している内科医長の平良亘さん(33)は、病院と診療所間片道約20キロの移動の負担や対面診療日の混雑が軽減されたことをメリットに挙げた。看護師が患者のそばにいることから、Webカメラを取り外して患部を写すこともできるとし、「オンラインでできないことはたくさんあるが、現在対象としている患者さんを診るうえでは不自由はない」と話した。
平良さんは「阿南病院も人員は少ない。オンライン診療が医師不足の解消につながるのではないか」と期待する。吉沢事務部長は「コロナ禍で医師と患者の距離を離すために導入が進んだが、我々は医師と患者の距離を近づけることが目的」と強調。今後、経験を積みながらオンライン診療の在り方を検討していくという。
オンライン診療は予約制。問い合わせは同診療所(電話0260・28・2014)へ。
◎写真説明:画面越しに診察を受ける患者(30日、売木村国保直営診療所)