新型コロナウイルスの水際対策として飯田市が独自に取り組む簡易検査キット(抗原定性検査)の無料配布について、佐藤健市長は28日会見し、配布事業を継続すると発表した。6月に続いて2回目で、現在の検査体制では防げない「無症状者からの感染を防ぐ社会実験」と説明。今回は往来後2回の検査を求め、実施期間も前回の27日間から約8カ月間へ拡大。関連予算2900万円を盛った本年度一般会計補正予算案を8月2日開会の市議会臨時会に提出する。
無症状感染者が感染を広げている可能性や、症状がある人も発症までに他人にうつす―といったことを背景に、市は水際対策を強化。お盆や年末年始を挟む2回目の社会実験では2万4000セットを用意して有効性を検証する。8月4日から来年3月23日まで受け付ける計画で、希望者はネットやFAXなどで申し込む。
前回(6月21~7月16日)に続いてアンケートによる結果報告を求め、検査のタイミングに関するニーズや現実的効果(無症状陽性者覚知と早期隔離)、偽陽性や偽陰性の発生頻度などを調べる。9月末を前半期と位置付け、危機管理室は「中間集計を行いながら後半の事業展開に反映させる」とした。
感染拡大地域との往来後に求める2回の検査について、佐藤市長は「1回の検査だけでは数日後に陽性となる可能性がある」と指摘した。計画によると、「帰省時」は帰省直後と72時間後に検査。旅行や出張などで往来があった場合も同様で、日帰り旅行の場合は4日目に検査する。
検査キットは1セット当たり750円で、前回と比べてより安価で一定の性能がある製品を選んだ。
1回目の配布状況について、配布した4923セットのうち個人が3557セット、団体が1366セットだった。
アンケートの回収率は41.9%。個人が72.4%の一方、団体は17.1%と低調。またキットの利用率は個人が32.7%、団体が25.6%と低く、未使用キット総数が3409セットに上った。
2度目の実施に向けては、飯田医師会の協力で検証した。報告によると、自己検体採取以降の検査キットの取り扱いの完成度は高いと推察。自己検体採取自体は「難しい」との回答が2.8%にとどまったものの、検査精度は検体採取に大きく依存するとし、システム設計の根幹として自己検体採取の完成度を高める介入が望まれるとした。
また地域の自発的検査に対する意識が高いと指摘し、課題を整理してさらに社会実験を重ねれば「住民の自発性を利用した水際対策の有用性が証明される可能性がある」とみた。
◎写真説明:会見で発表する佐藤市長