国土交通省中部地方整備局と県、南信地域の28市町村は22日、「2022年度天竜川上流総合水防演習」を飯田市川路の天竜川河川敷などで開いた。28市町村の消防団や住民など約1000人が参加。60項目以上の実践的な訓練を実施し、流域全体の水防体制の強化を図った。
中部地方整備局管内5県を持ち回りで開く大規模な水防演習で、県内で開催するのは9年ぶり。メイン会場の飯田市川路の他、伊那市や諏訪市でも開き、メイン会場には山田邦博国土交通事務次官や阿部守一知事も出席した。消防団の他、広域消防本部、警察、自衛隊、地元企業や水防協力団体、自治会など幅広い主体が参加した。
天竜川上流域での大規模災害に備え、関係機関や住民が協力して複合型災害に対する防災体制を確立し、水防意識を高めることが狙い。演習では台風や梅雨前線により、堤防の決壊や浸水、山間部での土砂崩落の発生が予想される状況を想定した。
メイン会場での演習では、堤防にビニールシートを張って浸水を防ぐ「シート張り工」、漏水防止の「月の輪工」など、各消防団がさまざまな水防工法を実演。県南部防災対策協議会は堤防決壊の緊急対策「荒締め切り」を行い、重機で堤防にテトラポットを置いた。
天竜川総合学習館かわらんべの講座を受講した親子ら約50人も参加し、土のう作りを体験。子どもたちはスコップいっぱいに土を盛り、交代しながら袋に入れていた。伊賀良小学校5年の男子児童(11)は「土が重くて大変だった。災害が起きた時に本当にこういうことをやるんだとて思えて、大事な作業の練習ができた」と話した。
演習では臨時災害放送局(FM臨災局)を設置。DX技術の活用もあり、ドローンとの連携により人が近づけない被災箇所の情報収集ができる「Car―SAT」も出動した。
災害に関する展示コーナーでは20のブースが並び、滑走せずに垂直方向に離着陸できる無人航空機も展示された。
中部地方整備局の堀田治局長は「きびきびとした迅速な動きが見られ、平素からの研さんの成果が発揮された訓練だった」と講評。「三六災害から61年だが、想定を超える災害は必ず発生すると肝に銘じておく必要がある。いざ災害が発生したら訓練の成果を大いに発揮し、被害を最小限に食い止め、住民の命と財産を守ってほしい」と呼び掛けた。
◎写真説明:土のう拵えを体験するかわらんべ講座の子どもたち