第26回参議院議員選挙は10日に投開票が行われ、自民、公明の与党が改選過半数を超える76議席を獲得して勝利した。憲法改正に前向きな日本維新の会、国民民主党などを含めた「改憲勢力」は憲法改正の発議に必要な3分の2(166議席)も維持した。県区(改選1)は6人が争い、立憲民主党現職の杉尾秀哉氏(64)が、自民新人の松山三四六氏(52)に約5万7000票差を付けて再選。補欠選挙を含めて野党の4連勝となった。
定数248議席のうち、選挙区で74、比例代表で50、神奈川選挙区の欠員1を補う合併選挙を合わせた125議席を選んだ。
与党は目標にしていた改選過半数の63議席を上回るとともに、改選議席の69から積み増した。
自民は1党だけで総定数の過半数を占める「単独過半数」に必要な69議席には届かなかった。公明は候補を立てた7選挙区で全勝した一方、改選数と同じ14議席には届かなかった。
非改選を含めた自公は158議席で、過半数の125議席を上回った。政権が信任された形で、岸田文雄首相は安定した基盤の上で政権を運営することになる。
全国32の改選1人区では自民が28勝で野党を圧倒した。立民は2019年の前回選から6減。岩手、新潟、山梨で現職が破れるなど野党共闘が限定的だったことが響く形となった。
立民は選挙区で10議席にとどまった一方、比例では改選7議席を維持し17議席を獲得。維新は選挙区で改選3議席から4議席、比例で改選3議席から8議席と積み増した。比例では立民を上回り野党第一党になるなど、計12議席を獲得し躍進した。
その他、国民民主が2減の5議席、共産が2減の4議席。れいわ新撰組は3議席、社民党とNHK党、諸派は比例で1議席を獲得した。
非改選を含めた新勢力は自民119、立民39、公明27、維新21、国民10、共産11、れいわ5、社民1、N党2、諸派1、無所属12議席。
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立民、自民、維新の主要3党の擁立候補が争う構図となった長野県区は、杉尾氏が43万3154票を獲得して勝利した。松山氏が37万6028票、維新新人の手塚大輔氏(39)が10万2223票、諸派新人の秋山良治氏(45)が3万1644票、N党新人の日高千穂氏(43)は1万6646票、無所属新人のサルサ岩渕氏(44)は1万978票を獲得した。
杉尾氏と松山氏の票差は約5万7000票。21年4月の補選で立民新人が自民候補に付けた約9万票差から縮まった。
杉尾氏は共闘した立民、共産、社民や連合長野、市民団体の支援を受けた。選挙戦では現職としての実績と国民目線での政治を強調するとともに、消費税減税による物価高対策や教育の無償化、非正規雇用の解消などを訴えた。
泉健太代表ら党の幹部らが続々と応援に入った他、県内各地を精力的に遊説して支持層を固め、無党派層にも広げた。
祝勝会で杉尾氏は「引き続き6年間、信州長野県の代表としてふさわしい行動を政治家として取る」と決意を述べた。
松山氏は県内での21年間のタレント活動で築いた高い知名度を武器に活動。公明の支援も受け県内全域で集会や遊説を重ねた。「信州から日本を元気にする」とし、移住者の増加や産業の活性化、デジタル実装の推進などを主張した。
岸田首相や麻生太郎副総裁ら党幹部が積極的に県内入りするなど党本部が全面的に支援。議席奪還を狙ったが、選挙戦終盤には松山氏の過去の女性問題や金銭トラブルなどが週刊誌に報じられ、大きな打撃を受けた。
手塚氏は県内全域を遊説し、党支持者や無党派層への浸透を図ったが広がりを欠いた。他の新人3人も浸透しなかった。
得票率は杉尾氏が44・6%、松山氏が38・7%。飯伊では松山氏が9町村で勝利した一方、飯田市など人口の多い5市町村で杉尾氏が上回った。
県区の有権者数は172万1369人で、投票者数は99万3314人。投票率は57・70%で、前回選を3・41ポイント上回ったものの、過去3番目の低さだった。
◎写真説明:花束を掲げる杉尾氏