【飯田市】佐藤健飯田市長 就任1年目の市政経営を振り返る

政治・行政

[ 2021年 10月 13日 水曜日 15時59分 ]

 佐藤健氏(53)の飯田市長就任から1年となる。人口減少や人材の確保が課題となる中、リニア中央新幹線や三遠南信道といった大規模プロジェクトを抱える同市。コロナ禍の1期目1年の市政経営を振り返り、地域課題に関する現状の受け止めや残りの任期に対する思いなどを聞いた。

 ―市長になり1年が経過した

 「コロナに追われた1年だった。1月になると新規感染者数が急激に増えて少しバタバタしたものの専門家会議の意見を聞きながら、かじ取りを最終的に誤らずに済んだと思う。成人式やイベントを中止するなど厳しい判断もあったが、結果的に感染の拡大を防ぐことができた。水際対策として取り入れた検査キットについても、専門家会議の後押しがあって具体化することができた。コロナ対策に追われた1年ではあったが、専門家会議や関係者の理解と協力があってなんとかやってこれた」

 ―新たに見えてきた市政課題は

 「市役所や市長が行っていることが、住民になかなか伝わらないと改めて感じた。伝わっていなければやっていないのと同じ。伝える努力は大事だと感じた。コロナ対策に関して、市長メッセージの動画を撮ってその日のうちにアップするようにしたことで、情報がないといった苦情が大幅に減った。動画やSNSの活用はコロナ対応を通じて進んだ。心配はコロナ禍で市民活動が縮小していること。今まで当たり前にやってきたことができない中、飯田下伊那の特徴でもある市民活動が細ってしまうことが心配」

 ―「2050年に飯田市が日本一住みたいまちになる」と宣言した。30年後に日本一住みたいまちにするための視点をマニフェストに取り入れ、その道筋として14項目の政策から成る「新・環境文化都市」創造プランを掲げた

 「まだ緒に就いたばかり。ただ、大きな方向性としてゼロカーボンシティ宣言を行い、総合計画の中期計画にSDGsの項目をひも付けするなど、環境の視点を取り入れた。これをどう実行に移し、形にしていくか。方向性は多くの人の共感を得ていると思う。本年度当初予算の中ではマニフェストに掲げたことがある程度盛り込めた。来年度の当初予算案はさらに一歩踏み込んだものにしたい」

 ―「停滞感を打ち破るような変化を求める市民の声に応えたい」と立候補し、キャッチフレーズに「ギアチェンジ」を掲げた。信念に「心かよう市政」を据え、選挙戦を通じて市民には「対話と現場主義を貫く」と約束した。政治姿勢に対する評価と、職員を含めた変化をどう捉えるか

 「対話と現場主義の政治信条は大事にしたい。選挙公約通り、就任直後に上郷北条地区へ出向いたのは私にとっては象徴的な行動で、対話と現場主義を貫く覚悟を最初に体現できた。厳しい意見も聞かれたが、市民と対話することが市政の原点だと確信した。また公約の1つである『ふれあいトーク』を5月にスタートさせた。そこには職員も同行し、現場で出された意見を職員が引き継いで実践してくれている」

 ―新型コロナの感染防止と経済活動との両立に向けた、これまでの取り組みをどう評価するか

 「専門家のアドバイスや医療関係者の協力を得ながらワクチン接種と水際対策を大きな混乱もなく進めることができた。簡易検査キットの無料配布には手応えがある。一方で経済の立て直しはまだ。コロナを理由にいろんな活動を控えることが常態化しつつあることを大変懸念している」

 ―アリーナ機能を中心とする複合施設について、議論が進んでいない現状を踏まえて「この1年の間に、候補地の絞り込みができたらいい」とする

 「南信州広域連合では現在、リニア時代に向けた地域振興ビジョン、いわゆる絵姿を描く作業を進めており、本年度中にいったん取りまとめる。アリーナについては『造るとしたら民設民営』と、就任前に整理された議論から進んでいない。絵姿の議論の中で『造るとしたらこの辺り』といった話がでるかもしれないが、絞り込みまでにはもう少し時間がかかる。絵姿の取りまとめを行う中で議論が再スタートすると思う」

 ―リニア県駅からJR飯田線への接続を円滑にする乗換新駅を巡り、乗換新駅設置を取りやめる意向を示し、「乗換新駅を造らないということを含め検討していく」とする

 「自分としての意向は変わっていないが、市として、あるいは広域連合として、意思決定するには代替案も含めた材料が必要だということで、本年度はリニア駅からの2次交通の在り方について調査事業を委託している。調査結果を踏まえ、来年度には新駅設置見送りを意思決定したい」

 ―エス・バードについて、「航空機一本やりの産業政策を見直し、産業分野全般にわたる振興拠点にする」と訴えてきた

 「産業センター理事長就任後にビジョンの見直しを行い、航空機に偏らないよう留意した。施設としてのエス・バードの使われ方も、今後変わっていく。環境測定機器は宝の持ち腐れにならないよう活用すべき。大事にしたいのは信州大学のサテライトキャンパスとしての位置付けで、これまで以上に大事にしたい」

 ―劇場型ホールを備える3施設を巡り、新文化会館は「時期」「場所」ともに現在の整備方針を既定路線とはしないとする

 「長期的な財政見通しを検討する中で、財政的に整備が可能な時期が整理されてくると思う。それに合わせて施設の規模、内容の議論や場所の選定についてのスケジュールが見えてくる。駐車場やアクセスは重要な視点。市民の皆さんに見える形で議論のプロセスを踏むことが大切」

 ―リニアや三遠南信道の工事が本格化し、リニアはいよいよ県内駅整備着手の段階となった

 「リニアはまず、移転をお願いする皆さんに対し、移転先の確保をはじめとして心配や不安を払しょくできるよう寄り添っていくことが最優先。その上で、駅周辺整備の実施設計を詰めていく作業などを並行する。静岡工区の水問題を中心に全体のスケジュールが流動的になっているが、市が担当する部分については、当初のスケジュールから大きく遅れることのないよう進めていく。産業界を含め、リニアへの期待や関心が低いという指摘がある。30代、40代の若い世代に働き掛け、『リニアをしたたかに活用する、リニアに振り回されない主体的なまちづくり』について一緒に考えたい。三遠南信道は国の予算も毎年確保され、着実に進んでいると認識する。青崩トンネルが開通すれば、大きな交通量が遠山郷に流れ込む。それに備えて道の駅遠山郷の整備など、受け入れ準備を進めなければならない」

 ―1期の2年目に向けて抱負を

 「まずは年末年始のコロナ対策。そこからお練り祭り、元善光寺御開帳、各地の御柱祭りへつなげていきたい。地域にとっての長年の課題にも果敢に取り組む。大学誘致もその1つ。信大の中村学長が情報系学部の新設に言及したのを受けて、市として新学部の誘致に名乗りを挙げた。4年生大学の誘致は地域の悲願。リニア時代のまちづくり構想の中核に信大の新学部を据え、地域の将来像を描いていきたい」

(聞き手・遠山貴雄)

◎写真説明:インタビューに応じる佐藤市長

  

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