県の次期総合5カ年計画策定へ向け、知事と飯田下伊那14市町村長が語り合う、「拡大版南信州地域戦略会議」が5月30日、県飯田合同庁舎であった。将来に向けた課題として各首長らは、高等教育機関の誘致や医師をはじめとする専門人材の確保などを挙げ、県の協力を求めた。
来年度から5年間の次期総合5カ年計画の全体計画や地域計画の策定へ向けた、阿部守一知事と市町村長の意見交換の場。県内10広域圏別に行っている。
意見交換で、佐藤健飯田市長は「目指す方向は日本、世界から一目置かれる存在。あと10年でリニア沿線地域となる。多様な分野で日本をけん引する存在になるよう次期計画に盛り込むべき」と強調した。
強みとなる環境分野では、ゼロカーボンやグリーンインフラなどの先進的な取り組みをリニア駅を中心に行うほか、情報系4年制大学を誘致し「高等教育の一角を担いたい」と学びの推進を強調。他の町村長も信州大学新学部誘致への県の協力を求めた。
阿部知事は、新学部誘致について「文科省に認められないと学部増設ができない」とし「しっかりと関係者間で合意形成を」と求めた。また、大学・サテライト誘致はもちろん、「やまほいくに続くものを」と市町村立小中学校、県立高校、既存教育機関の特色ある学校づくりが必要だとした。
町村長は、教員免許のない地域人材を非常勤講師にする場合に心理的障壁があること、県一括採用方式では特色ある教育人材の採用が難しいことなどを挙げた。また、特別支援員などの人材支援、住民や子どもと学ぶ地域教育活動への教職員の参加推奨を求める声があった。
専門人材では、医師確保を中心に医療・介護人材の確保や阿南病院の機能強化、DX、防災などの人材確保などを求める声が相次いだ。
阿部知事は、県ドクターバンクや医学生奨学金制度に取り組むものの、出身医師のUターンにも「まず医学部進学者を増やす必要がある」と教育を重要視。阿南病院のリモート診療など中核病院を拠点にした地域診療をさらに充実させる必要があるとした。
この他、県との連携強化や小規模自治体の支援、外部の企業や大学などとの連携の仲介などを求める意見があった。丹羽克寿南信州地域振興局長は、ブロック単位での職員の意見交換や市町村への総合的アドバイス対応、専門人材確保や外部連携に向けた検討などに取り組むとした。
全体の意見交換を終え、阿部知事は「1日も早い開業を願う地域要望を踏まえ、県としてリニア・三遠南信道関連の基盤整備を進める」とした上で「豊かな自然と伝統文化を守り、人をひきつける地域を一緒につくっていこう」と呼び掛けた。
◎写真説明:県知事と飯伊の首長が懇談