飯田市は17日、総額477億5000万円の2022年度一般会計当初予算案を発表した。新型コロナウイルス対応と、コロナ収束後を見据えたまちづくりや経済対策に重点を置き、21年度当初予算比で0・6%増。2年連続で過去最大を更新した。リニア駅周辺関連道路にかかわる用地買収や物件補償などが全体を押し上げた。
佐藤健市長にとっては2度目の予算編成で、「コロナ禍を乗り越えて日常を取り戻すための予算」と位置付ける。
新型コロナの影響で停滞している市民活動や経済活動の再興を図る基本方針に基づいて編成した。
歳入の3分の1近くを占める市税は経済の回復基調を受けて前年度当初比7・8%(約9億5200万円)増の131億400万円を見込む。国から配分される地方交付税は4・6%(5億1500万円)増の117億1000万円。
市債(借金)は、地方交付税の財源不足を補う臨時財政対策債が8割近く減り、市債全体で23・4%減の36億7300万円を発行。貯金に当たる財政調整基金からは3億4000万円を取り崩す。
22年度末の一般会計の臨時財政対策債を除く市債残高は227億5300万円、同基金残高は114億2600万円になる見通し。
歳出では、人件費や扶助費などの「義務的経費」は前年度当初比1・0%増の217億6200万円とした一方、公共事業などの「投資的経費」は10・0%減の64億9500万円。市債の返済に充てる公債費は3・2%増の50億100万円を計上した。
予算案は24日開会の市議会3月定例会に提出する。
コロナ対応に1億7000万円
TOJ3年ぶり開催へ
2022年度当初予算編成に向け、佐藤市長は昨年12月の市議会定例会で基本方針を示した。コロナ禍で停滞している状況から再び立ち上がるための施策を講じる姿勢を強調。充実した検査・医療体制の維持、地域経済の再生、市民のムトス活動の再興の3点を軸に据えた。
最優先するコロナ対策について、市はワクチンの3回目接種関連で1億3800万円を計上。2回目の接種完了者のうち18歳以上で21年度に実施できない人、未接種を含めた12~17歳などを対象に盛り込んだ。
希望する市民らに無料配布する簡易検査キット(抗原定性検査)について、22年度も継続する方針で、9月末までの2万4000個分の購入費として2500万円を計上した。お盆や夏休みの人流までを想定。感染者の早期発見や感染拡大の予防効果が大きいとみた。
65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人、介護医療従事者を対象とする抗原定量検査の助成について、クラスターが起こりやすい保育従事者にも拡大する。補助額は上限4000円で、1人年2回まで。
コロナ後を見据えた観光振興では、三遠南信道天龍峡大橋の歩道「そらさんぽ天龍峡」やパーキングエリアの活用、風越山や虚空蔵山に絡めた観光地づくり、国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)南信州ステージ」などに約6200万円を計上した。うちTOJは3年ぶりの開催となり、市は自転車を活用したまちづくりを再構築したい考えだ。
市債残高と基金
市債残高は財政運営目標「300億円以内に抑制」に対し、臨時財政対策債を除くと22年度末時点で227億5300万円を見込む。
財政運営目標で「27億円程度確保」とする財政調整目的基金の残高は、22年度末時点で47億1600万円を見込む。
佐藤市長は「地方債を積極的に活用して事業を進めたい。基金残高は家計でいえば貯金に当たり、大きく減らすことは将来的な財政運営に影響が出るため慎重に考えている」とした。
市は昨年11月、新たな財政運営目標を公表した。これまで基金は財政調整、減債、公共施設等整備、ふるさとの4基金を「主要4基金」として財政運営目標の対象としてきたが、特定目的の性質が強いふるさと基金を切り離し、財政調整、減債、公共施設等整備の3基金を財政調整のための基金と位置付け、新たに財政運営目標の対象とした。
地方債は、世代間負担の公平性を保つ考え方に立って運営する方針。10年間はさまざまな大型事業によって地方債残高が増加する傾向にあり、目標は臨時財政対策債を除く一般会計の地方債残高に着目した。
また目標を達成するためのチェック指標として、借金返済負担の重さを示す「実質公債費比率」と、財政規模に対する負債残高の割合を示す「将来負担比率」にも着目。実質公債費比率は「15%未満に抑制」、将来負担比率は「100%未満に抑制」とする。
当初予算案のうち11ある特別会計は1・9%増の503億7500万円で、一般会計を合わせると前年度当初比で1・3%増の981億2500万円となった。
この他、特定目的基金の計は22年度末で51億2800万円。うちリニア中央新幹線飯田駅整備推進基金は12億6700万円を見込んだ。
◎写真説明:会見で発表する佐藤市長