飯田市は18日、今後10年間の財政見通しと財政運営目標を公表した。リニア中央新幹線開業や文化会館の改築といった大型建設投資が迫る中、佐藤健市長は事業を進めながら持続可能な財政運営を行っていく姿勢。「難しいかじ取りが求められるが、この物差しを当てながら適切な判断をしていく」と述べた。
一定期間内に複数の事業を行うには基金と地方債の活用によって資金を調達する必要があり、財政課は「基金の減少と地方債の増加は避けられない」と指摘。その上で、許容範囲や財政指標の考え方を整理した。
財政見通しは、2020年度決算と21年度の決算見込みを起点とし、22年度から10年間の見通しを一般会計の一般財源ベースで推計した。
市税のうち、個人市民税は28年度までは納税義務者数の減少を見込んだ。固定資産税は3年ごとの評価替えによる減少のほか、リニア開通後は関連施設などにかかる増収分を見込んだ。
歳出のうち人件費は22年度時点の想定職員数に基づいて試算し、段階的に引き上げられる定年延長制度を考慮した。扶助費は15年度から5年間の伸び率を基に、毎年2%程度伸びると想定した。
普通建設事業についてはリニアや三遠南信道関連などの大規模事業を見通した。
22年度から10年間のリニア関連事業について、総事業費は147・5億円を見込み、うち一般財源は7億円。駅周辺整備事業として82・3億円、関連道路整備事業として51・9億円をそれぞれ盛った。リニアの開業時期は不透明の状況だが、市が行う事業は当初予定通り進む想定で実施期間などを設定した。
新文化会館は現段階では場所、規模ともに定まってないものの、今後10年間の財政に大きな影響があるとして、27年度から3年間で建設費(80億円)のみ計上した。
一方の財政運営目標は今後10年間の財政見通しを基に、総合計画「いいだ未来デザイン2028」の最終年度となる28年度末の目標値を設定した。
うち「財政調整目的基金」の残高は標準財政規模の10%にあたる「27億円程度確保」とし、地方債は「300億円以内に抑制」と設定した。
基金は財政調整、減債、公共施設等整備、ふるさとの4基金を「主要4基金」として財政運営目標の対象としてきたが、特定目的の性質が強いふるさと基金を切り離し、財政調整、減債、公共施設等整備の3基金を財政調整のための基金と位置付け、新たに財政運営目標の対象とした。
地方債は、世代間負担の公平性を保つ考え方に立って運営する方針。10年間はさまざまな大型事業によって地方債残高が増加する傾向にあり、目標は臨時財政対策債を除く一般会計の地方債残高に着目した。
また目標を達成するためのチェック指標として、借金返済負担の重さを示す「実質公債費比率」と、財政規模に対する負債残高の割合を示す「将来負担比率」にも着目。実質公債費比率は「15%未満に抑制」、将来負担比率は「100%未満に抑制」とした。
佐藤市長は「地方債残高は少なくて良い、実質公債比率は低いほど良いといった見方を脱し、一定の許容範囲の中で基金と地方債を活用して必要な投資を行う考え方で整理した」と話した。
財政見通しは、今後の経済情勢や制度改正を踏まえ、毎年の予算発表に合わせて修正を図っていく。総合計画後期計画の策定時には31年度までの見通しを全面的に見直す予定。