6月22日公示、7月10日投開票の日程が有力視される今夏の参院選まで残り2カ月と迫っている。改選数1の県区は立憲民主党現職の杉尾秀哉氏(64)と自民党新人の松山三四六氏(51)が立候補を予定。両派とも事実上の「与野党1対1」となることを見据え、大型連休中も飯田下伊那入りして街頭演説するなど前哨戦を繰り広げている。
県区では改選数が2から1に減った2016年以降、補欠選挙を含む3回の選挙で与野党一騎打ちの構図に。いずれも野党統一候補が議席を確保し、与党の自民党が議席を得られていない。今回は昨年10月の衆院選で議席数を大きく伸ばした日本維新の会も県総支部が独自候補の擁立を目指しており、構図は固まっていない。
再選を目指す杉尾氏は16年参院選に民進党(当時)から初出馬し、共産、社民を加えた県区初の統一候補として挑み、自民の現職を破った。
昨年10月の衆院選の結果を踏まえ、野党共闘の見直しもささやかれたが、4日には立民、共産、社民の県内組織が政策協定を結び、杉尾氏に一本化する方向で事実上固まった。知名度のある松山氏を「脅威」と警戒感を強め、飯伊でも連携を深めている。
一方で新人でタレントの松山氏は3月に正式に出馬を表明。2年前から出馬を要請されていたが、若手県議の熱心な誘いを受けて立候補を決めたとする。
過疎や少子高齢化などを課題に挙げ「信州を次世代にも誇れる場所に」と語り、コロナ対策や国政とのパイプ役の必要性を争点にしたい考え。先月9日に選対本部を立ち上げて本格始動し、6日には飯田市を訪れて街頭演説やあいさつ回りをした。
県区では他に「NHK党」新人の日高千穂氏(42)が出馬を予定している。
真っ当な政治取り戻す
立民現職・杉尾氏
杉尾氏は大型連休中、メーデー集会に出席し、県内各地で遊説を精力的に展開。飯伊では2日に飯田市内を回り、12カ所で青空対話集会を開いた。
杉尾氏は「アベノミクスの副作用で円安物価高になった」と述べ、「今こそ一人一人の生活に寄り添う政策が必要」と強調。ウクライナ問題に乗じて安全保障体制を変える動きがあるとし、「力には力では単なる軍拡競争を招く」と批判した。「今後3年間国政選挙がないかもしれない。一強体制の大政翼賛的な政治を止め、与野党が競い合う真っ当な政治を取り戻さなければ」と力説した。
「信州市民連合」と立民、共産、社民の県組織は4日、野党共闘に向け政策協定を結び、事実上候補を一本化した。昨年の衆院選で野党統一候補が敗れたため、立民県連は2党と直接協定を結ばず、より幅広い支持を得たいとする。
コロナ後の地方に活力を
自民新人・松山氏
松山氏は6日、飯田市内で宮下一郎衆院議員、小池清県議とともに街頭演説や事業所へのあいさつ回りを行った。「コロナ後の世界はがらりと変わる。地方はデジタルの力で1次産業を復活させ、若者を呼び込み活力を得るチャンス」と強調。「県を愛して仕事をし、政策を実現できる国とのパイプを持った議員が必要。その役目を担いたい」などと訴えた。
知久町商店街では店主や店員らに名刺を渡して参院選への出馬を伝えた。県内のテレビやラジオでで21年間活躍した知名度は高く、記念撮影を求める人や車を止めて声を掛ける人の姿もあった。
松山氏は「近いうちに飯伊全域を回り、顔を見て声を聞いてもらいたい」と力を込めた。
党県連は昨年12月に選定委員会を設け、候補者を公募。男女4人の応募から、知名度の高さを踏まえて松山氏の擁立を決めた。
◎写真説明:集会で訴える杉尾氏(右)と飯田市内を回った松山氏