飯田市の牧野光朗市長は10日の年頭記者会見で、任期の最終年に向けて「飯田の結の力で結果を出す」と述べた。リニア・三遠南信道時代に向けた取り組みをできるかぎり軌道に乗せたい意向で、進退については「課題が多い中だが、しかるべき時期に判断する」と述べるにとどめた。2020年度の市政経営の基本方針についても示した。
判断の具体的な時期については「予算編成する中でどこまでやれるのか自分の中で整理し、その後になる」と語った。
10月27日には4期目の市長任期満了を迎える。市長就任当初に掲げた「人と人、心と心を結ぶ水引型市政経営」に立ち返りたい考えだ。
人口減少、少子高齢化が進む右肩下がりの時代に、地域づくり、産業づくり、人づくりを着実に進めるには「市民との結び付きを大事にした取り組みが必要不可欠」と指摘。今年の漢字一字に「結」を掲げると、「飯田の結の力で輝かしい未来に向けた結果が出せるようまい進する」とした。
20年度は市版の第2期総合戦略の策定に取り組む年になる。市総合計画「いいだ未来デザイン2028」前期計画(4年)の最終年度にも当たる一方、総合戦略が19年度が最終年度となり、この1年の差を解消するため市は総合戦略の計画期間を1年延長すると決めた。総合計画の中期計画策定に合わせて総合戦略の要素を盛り込むことで、より一体感を図る―とする。
これまでの地方創生に絡めた取り組みを踏まえ、牧野市長は「さまざまな取り組みが全国の地方創生の課題を克服する可能性がある先進事例」と指摘。持続可能な地方創生に向けて「方向性は間違っていない」とみて、第2期の策定へ決意を述べた。
高校時代に地域との関わりを深める「地域人教育」は飯田OIDE長姫高校で先行する。牧野市長は高校の職業科から普通科への展開と、地域人教育を受けた卒業生が大学でさらに磨くための「高大連携の構築」を今後の課題に挙げた。
リニア関連は、上郷飯沼で進めるリニア県内駅の周辺整備(6・5ヘクタール)に関する事業が本格化する見通し。昨年12月には基本設計と概要版の「飯田・リニア駅前空間デザインノート」を正式決定。20年以降は、詳細な事業の姿を描く実施設計に入る。「人を中心とした21世紀の駅づくり」に取り組む姿勢。
リニア本体工事の進ちょくに合わせ、中央道座光寺スマートIC(仮称)などの関連工事、代替地の確保、残土対策も進める。周辺整備などで移転を迫られる住民を対象に、市が整備する移転代替地については「不安や心配を払しょくし、安心して新たな生活を構築できるよう責任ある対応に努める」とした。
三遠南信道関連は、天龍峡―龍江インター間と天龍峡大橋の開通による効果に期待感を示した。天龍峡にかかわる多様な主体によって天龍峡の将来ビジョンを考える組織を立ち上げ、再生に向けたテーマに沿って観光地域づくりを推進する。
行財政改革の推進では、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入に向けた検討を始める。
スマートシティー」構想
リニア県内駅周辺整備に絡め、最先端のITで便利な暮らしを実現する「スマートシティー」に取り組む方針。駅周辺整備計画の中で都市のエネルギー政策や、ITを活用し効率的な移動を可能とする次世代の「MaaS(マース)」を検討していることを踏まえた。
庁内には本年度、「新たなモビリティ検討チーム」が発足している。自動運転やEV(電気自動車)、マースといった新技術を地域づくりや行政サービスにどう活用できるかを探る目的で、今後必要な課題の検討を総合的に進める。
大学院機能充実へ
産業や教育、文化、学術研究などの分野で協力し、地域の発展や人材育成に向けた包括連携を昨年12月に信州大と結び、牧野市長は「エス・バード(座光寺)での大学院機能の充実に向けた大きな一歩」。リニア時代に向けては、周辺環境と調和した公共空間を設計する「ランドスケープ(景観)デザイン」についても信大と協力する姿勢で、デザイン分野をはじめ複数の分野を視野に入れた総合的な学びの拠点「信州大学南信州キャンパス」の実現を目指す。
また来年度は、ものづくり工房「ファブ☆スタ(仮称)」を開設。小中学生や大人も含め、ものづくりに親しむことができる場になる。
◎写真説明:会見する牧野市長