中南信で豚コレラ感染の野生イノシシが広がっている問題で県は28日、阿智、平谷両村で経口ワクチンの本格散布に向けた現地踏査を始めた。摂取率を上げる狙いで、29日に阿南町、売木、天龍でも計画。イノシシの通り道など効果的な散布場所を決め、餌付けした後、9月6~8日に2エリアで計1400個を散布する。
感染拡大防止対策で、飯伊2エリアの他、松本市、塩尻市の各1エリアで計2400個を散布する。県と市町村、県畜産会、県猟友会、県獣医師会、県養豚協会で設立した「県豚コレラ経口ワクチン対策協議会」が実施する。
28日の踏査には、県や自治体の職員、猟友会員と委託業者の社員計12人が参加。阿智村役場で工程を確認した後、同村清内路と浪合、平谷村の3班に分かれた。
清内路班の5人は、感染が広がる木曽地域に隣接する清内路峠付近の村有林を調べた。
防護服を着用し、イノシシが通るけもの道や、寄生虫を落とすために泥をあびる「ぬた場」の位置を確認。掘り起こしの痕跡も調べながら、半径1キロ圏内各1カ所を目安に計10カ所の散布場所を探った。
9月1日から行う餌付けの試行として、トウモロコシの粉末も置いた。
散布は6~8日で、深さ10センチの穴を掘り、ワクチンを餌に混ぜて埋める。1カ所あたり20個を散布する計画で、飯伊では阿智・平谷と、阿南・天龍・売木の2エリアで各30カ所前後ずつ、計1400個を埋める。
5日後の11~13日に回収し、摂取状況を把握する。10日後からは1エリア5~10頭を目安にイノシシを捕獲し、実際に抗体ができているかも調べる。
県南信州地域振興局農政課の神通川洋一課長は「養豚農家にとって大きな脅威。できる限り効果を上げられるよう努め、ウイルスの侵入を防ぎたい」と話した。
飯伊では7月に根羽村で見つかった野性イノシシ2頭の感染で、同村全域と平谷村、売木村の一部が半径10キロ円の調査対象区域になっている。岐阜県や木曽郡内の発生で飯田市と松川町、阿智村の一部も入っている。
◎写真説明:村有林を踏差し、粉末トウモロコシを設置